2005年09月17日

ネズミの思想!

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 9月16日。上野・東京芸大美術学部で開かれた公開講義に行った。(芸大に足を踏み入れるのは大学院入試(音楽学部)に落ちて以来。)講師は平井玄氏、演題は「ネズミの思想――甦る騒動師ベンヤミン」。5時間たっぷりの講演である。野坂昭如の『騒動師たち』を不穏な思想家ベンヤミンの圏域に引きこみつつ「ネズミの思想」を構築するという、なかなか野心的な企画。初日は小田マサノリ氏、2日目は足立正生氏をゲストスピーカーとして招いたという。(小田さんの映像が見られなかったのは残念!)以下、メモした講義ノートをアップしておくので勝手に内容を想像してください。教室にレコードプレーヤー(!)を持ちこみ、アイラーやらパーカーやらをかけっぱなしで話すのが格好良かった。ちなみにアイラーの「スピリチュアル・ユニティ」を「世界で最も美しい音楽です」と言いながら紹介していた。まったく同感。「ネズミの思想」に続く「ウナギの思想」の可能性について深く示唆を受けた。

「ネズミ人間の可能性」 ミッキーマウス、グリとグラ 鼠小僧次郎吉→黒テントで復活 カフカ「歌姫ヨゼフィーネ」(1924) 野坂昭如『騒動師たち』 『行き暮れて雪』(中公文庫) 『文壇』 50年代に月収30万 開高健『ずばり東京』、ECD 「山谷・やられたらやりかえせ」で2人殺されたとき野坂昭如は山谷に2、3日泊まりこんで週刊新潮のコラムを書いた ■アルバート・アイラー「スピリチュアル・ユニティ」■ 「世界で最も美しい音楽」「肯定的」 菊池成孔『東大のアルバート・アイラー』 雑音多いほうが情報量が多い→ディープ・パープルよりジミ・ヘンドリックス 「プリミティヴ」 アイラーの音楽はワンコードで演奏自体は簡単(大友良英) ノイズ→ネズミの声 マイルス、ウィントン・マルサリス 知的な音楽 フリーク・トーン 限界を超えた高音 菊池「おかまの声」 カフカ 二十日鼠→ユダヤ人のアレゴリー 「私たち一族は音楽に疎い」 シェーンベルク ユダヤ系 ハスカラ(ユダヤ啓蒙運動) マーク・ボラン、セルジュ・ゲンズブール 高橋悠冶『カフカ――夜の時間』 ヨゼフィーネの声 つぶれた声、かすかな唸り ゴールドベルク変奏曲の新盤 音程のはずれ ずさん、いい加減、余計な音 『音楽のおしえ』「バッハはヨーロッパ音楽とは関係ない」 70年代の高橋悠治はジャズ嫌い→アドルノの影響 ジャズの重要な側面を言い当てている ジャズ喫茶のマスターが有線放送のアドバイザーになっている ジャズの先端はネズミの歌 ■マイルス「ダーク・メーガス」■ 「ゲット・アップ・ウィズ・イット」 マイルスがいちばんフリージャズに近づいた2枚のアルバム 活動停止直前 ワンノート ネズミ的要素 ギターのカッティング、ベースギター→ファンクに影響 全員同格で一斉即興演奏 ミッキーマウス(1928) 原始的なロボットでありながら動物→意味もなく脈絡もなく暴れ回る ルーズベルトのニューディール政策 労働運動 ケインズ主義 動物、反人間は西海岸の移民たちのアレゴリー ポグロム(ユダヤ人迫害) ブレヒト『三文オペラ』(1928)ロンドン警視庁 剽窃魔→リミックス、サンプリング ワイル「三文オペラ」→ジャズの影響「マック・ザ・ナイフ」 ベンヤミン ゲットーの外で育った非ユダヤ的ユダヤ人 データベース 散文化、断片化した文化状況への批判 ネズミ思想の創始者 「ヨゼフィーネ」「ミッキーマウス」「三文オペラ」の三つをおそらく同時に見ていた フォード工場のストライキ 労働組合 幸徳秋水→渡米 反イラク運動 ネズミの反乱の可能性 エスニック、アナーキー このへんにベンヤミン思想のいちばん面白いところがある■ジュゼッピ・ローガン(フリージャズ)「Quartet」(1964)■ その後消えてしまった謎のミュージシャン グループ「パラドックス・トリオ」を予感 野卑な音 前衛的エスニックジャズ 「フリーなジャズ」「フリー・フロム・ジャズ」の2つの意味 麻薬売買 アイラーの墓は米軍基地にある 川に死体が浮かぶのはネズミの死に方以外の何物でもない 無様な、無意味な死 パサージュ論のメモが入った皮袋をバタイユに預ける→市立図書館の地下室に保管 パサージュ論のフーリエの章にミッキーマウスが突如出てくる フーリエは人間と動物を区別しない→ユートピア ゲッベルスもミッキーマウスのたいへんなファンだった ナチ幹部の秘密上映会が行われディズニー映画は見られていた 動物的な攻撃性を持ったネズミ的なもの ■チャーリー・パーカー ダイヤル盤「バーズ・ネスト」■ バークレー音楽院(現、音楽大学) 渡辺貞夫 バークレーメソッドをネットで公開 複雑なコード、スピード ディズニーランドの支配者の息子 「裏ミッキーマウス」 初期のミッキーマウスの暴力性 ギャングや金持ちたちのために制作→チャーリー・パーカーに受け継がれた 黒人たちの反抗を制圧するためにマフィアを使ってCIAは麻薬をスラムにばらまいた 「ネズミ人間」の歌→ベンヤミン、ブレヒト、カフカ 下から湧き上がってくる繁殖物 ノルベルト・ボルツ『ベンヤミンの現在』(法政大学出版局) バイオテクノロジー 遠藤徹(同志社大学)→カウンターカルチャー好き 有機物と無機物の境目がなくなってきた LSD サイケデリックな人間の変容 ジョン・ゾーン「コブラ」 敵の手段を逆用 ニューロサイエンス カトリーヌ・マラブー『私たちの脳をどうするか』 ヘーゲル 小泉義之 「ほんとうに動物になる」ことが証明されつつある 野坂昭如→横山健が大ファン ヒット曲 60年代釜ヶ崎で毎年暴動が起こっていた 街頭騒乱とメディアの効果 小沢昭一主演「エロ事師たち」 破綻して単行本化されなかったものがたくさんある 中上健次よりパーカー的 野坂昭如『東京小説』(講談社文芸文庫) バブル時代の東京を描く→太ったネズミ ■Raz Mesinai「Before the law」(2001)■ ジョン・ゾーンがプッシュ ネズミ的な神経が感じられる ニューヨーク「トニック」 「New Jazz」(インパルスレーベル)→アヴァンギャルドは反発 ドイツこそ最も反ユダヤ的ではない国 クレズマー イディッシュ語 カネッティ(セファルディの血を引くチェコ生まれ) フォークダンスの多くはクレズマー→GHQの民政部門にユダヤ系が多かった ユダヤの雑種文化 雑種なネズミの生命力、繁殖力 ECD「失点イン・ザ・パーク」(太田出版) 中野生まれ、吉祥寺育ち ガレージの生家を訪ねる→ネズミそのもの (註:■内は音源紹介)
posted by unagi at 09:32| Comment(9) | TrackBack(1) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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