
招待券を手に入れたので、ひさしぶりに南座へ出かける。(先月は金がなくて顔見世に行けなかった。)
前進座の「三人吉三」。残念ながら土佐衛門伝吉(小佐川源次郎)以外にあまり見るところのない舞台だったが、それでもやはりこの芝居は何度見ても面白い。
ストーリーは、お嬢吉三/お坊吉三/お尚吉三という3人の盗賊が、ひたすら強盗や殺人を繰り返し、運命の糸に絡めとられて破滅していく物語。こういう芝居を初春に見ると、ことし一年もがんばって悪いことをしよう、というすがすがしい気持ちになってくる。
悪の輝き。悪 アズ ナンバーワン。
そういえば先日、イギリスで、生き別れになった双子の男女が、お互い知らずに愛し合って結婚していた、というニュースが話題になった。2人は「双子とは知らなかった。お互いに避けがたい魅力を感じた」と話したとか。
「三人吉三」に、まったく同じ話がある。生き別れになった十三郎とおとせの2人もまた実は双子の兄妹だったのだが、こちらの2人のほうは、兄・お尚吉三の手によって首を斬られて殺されてしまうのだ。理由は「畜生道に落ちた」から。
おそろしい話だが、その点、現代においては、裁判所に「婚姻無効」を言い渡されるだけで済むのだから、実に安心だ。